クレヨン   <恋愛>

クレヨン, 古いクレヨン, 摩耗, 色, カラフルです, クレヨンの背景, 静止

 

  作:タネダー

 

日没, キス, カップル, 愛, ロマンス, ロマンチック, シルエット, 影

 

都会の裏側 僅かに差し込む月明かり そこそこボロアパートの片隅 賑やかなお笑い芸人の声

床の絨毯 ポテトチップスの散り散り テーブルの上の潰れたビール缶二つ ベタついた唇交わる一点

もし僕らがあのテレビの中で いつもを送ったなら 低視聴率に苦情と批判とご意見電話 夢見る乙女の目の輝きは失われるだろう

人様から見た僕らの恋なんてきっと 花壇のレンガの陰にある 緑が剥げた雑草のことなのだろう

 

そうさ僕らは 鮮やかで見栄えのいい 晴れた大空の水色のような恋を描いてるわけじゃない

でも僕らの中には何かがあって それを運命と呼んではいいのかわからないけど

これからも ちょっと粗くて 鮮やかでなくて あまりきれいでもない クレヨンで恋を描いていこう

それでいいから それがいいから

 

 

子, 落書き, 描画, クレヨン, スケッチ, デザイン, 創造的です, 紙

 

君が深海の黒さよりも落ち込んで うずくまっているとき 僕にかけられる言葉は大丈夫じゃない「大丈夫?」くらいで 君のそばにいるのが精一杯だろう

君とまた真赤なケンカをしたとき 仲直りなんて頭にもなく 間のヒビは粉々に砕け散るのだろう そうやって思うがまま傷つけ合って でも夜が寂しくなって そしてまた自然治癒するのだろうか

もしも君が僕がピストルを向けられた時 アニメやドラマの台本通りに 代わりに撃たれようとはしないだろう できないだろう ただ怖くて足が震えて心臓が痛くて 動けなくて ただ見ていることしかできないだろう

 

そうさ僕らは インクやピクセルの集合体で描かれるような ドラマやらロマンやら何とかチックな恋を描いてるわけじゃない

でも僕らには確かな結合があって それが愛だと言われたら頷くことしかできないけど

これからも カッコよくない カッコつけない 強がりもしない 何とかチックでもない そのままのクレヨンで恋を描こう それでいいから それがいいから

 

 

空, 雲, 飛行機雲, 青, 雲の形, 暗い雲, 霧, 夕方の空, 気分

 

ハルカゼタンポポ   <季節・春>

 


「ハルカゼタンポポ」  
作:タネダー

 

蝶, 花, 受粉する, 受粉, 白蝶, 蝶の羽, 翼のある昆虫, 鱗翅目, ペア

 

ああ春の匂いがする 新しい色の風が吹いている 

頭の上の太陽は 優しくて 新鮮な空気をほんのり暖める

僕のワクワクは心の30% 残りは寂しさと不安だろう

思い出の日々 見慣れた過去たちが おもりになっている

 

そんな自分を迎え入れた春 これはオープニングセレモニー

小鳥は鳴くし 花も咲くし 川には雪解け水だ

まだひよっこで黄色いタンポポは もうすぐ白いフワフワを身にまとい

この春風に乗り 太陽のある大空へ もうすぐ飛び立って行く 

周りをきょろきょろしながら 

 

 

 

ああ夏の匂いが混ざる 高まる不安は どうしてもアルバムに入りきらない

春風が生まれる大空 変わりゆく大気の流れ 

この小さなタンポポは どんな風に乗り どこへ向かって どこに着地するのか

目の前の春霞 反射する薄白い光 先は見えない

 

この春が始発点 新たな一歩踏み出す その瞬間の足元 もう霧の中

この先の道 燃え盛るときもあれば 凍ってしまうこともあるだろう そのサイクルを人々は宿命と呼ぶ

小さなタンポポよ この先の 未知を 宿命を 恐れるがいい 不安も抱えていい

とりあえずこの春風に乗り 遥か彼方へ飛んでゆくがいい 

決意は後からついてくるから

 

 

 

今まさに 飛び立つ カウントダウンはいらないよ

無限の羽をまとった ハルカゼタンポポ 大空へ

 

 

 

 

 

 

新月の日に   <恋愛・失恋>

空, 夜, フィールド, 夜空, 暗い, 雲, 雰囲気, ツリー, 国

 

新月の日に」  作:タネダー

 

夜空, 風景, 光のトレイル

 

このマンションからはよく月が見える 毎日夜空を見上げては 月が綺麗だった

君を愛してるよ これが一番で 二番目に多く言った言葉は 今日は月が綺麗だね

でも本当は月よりも それを見上げる一途な君が目当てで 君と心を通わせることが何よりもうれしくてさ

今日も月を見ようと いつものベランダに出てみたけど そこにいつもの月はなかった 今日は新月の日だ

ああ残念 今日は月を見上げる 君のあの綺麗な顔が見れないな 君の顔が見たいよ

ああしょうがない さあさあ部屋に入って テレビでも見ながらさ 酒を飲んで 早く酔っちまおう

 

 

ビーチ, 足跡, 砂, 徒歩, 女性, 海岸線, 手順, 海, 海岸, 水

 

今日は新月の日 月明かりに照らされた 君の綺麗な顔が見れないよ そばにいないよ

今まで一緒にいてくっれた 君は僕から遠のいた 君はもう僕の元から去っていた

行き交う愛でオーバーヒート寸前だったスマホに いつの間にか吹いていた乾いた秋風 君からのLINEの通知が来ることはもうない

僕らの愛はもう完全に死体となった 一生このままだと思っていた僕らの恋愛は思ったよりも短命だった

ああ寂しいよ 悲しいよ でも遠ざかっていく君を止められなかった 僕も逆方向を歩いていたから

間を埋めた隙間風 バイバイ 月を見上げた日々よ 手は振らないよ 今日は新月の日

 

 

男, 人, 暗い, シャドウ, 手, 悲しい, 泣いている, 不幸です, 絶望

 

部屋の棚に大事に飾っておいた 君との写真 捨てることができないよ 君はもう燃やしたんだろうな

君の電話番号も 電話帳から消せないよ もう解約されていると勘付いているけど

 

 

オリオン, 星座, 満天の星空, スター, 銀河, 夜の空, 天体写真, 天体

君がいない夜空はむなしくて 都会のポツポツ星明かりじゃ とても寂しいよ

あの頃は本気で笑えたバラエティ番組 テレビから出てくる無機質な声は どんどん遠ざかっていく

君がもういなくなってから 何度も君とすれ違った 頭の中で

君はもういない この漆黒に吸い込まれそうだ 新月の日

 

 

悲劇のヒロインになったよ   <恋愛・失恋>

本, ローズ, ブックマーク, 開いた本, ページ, 章, 小説, 読み取り

 

 

「悲劇のヒロインになったよ」    作:タネダー

 

女性, 絶望的です, 悲しい, 涙, 泣く, うつ病, 喪, 絶望, 損失, 頭

アイツと付き合うと決めたあの時から この物語はもう始まってたんだな

おまえは俺の全てだとか お前がこの世で一番大事だとか

ああ あの時は散々いい言葉を並べて来たくせに

ああ そんなに簡単に一番のお宝を捨ててしまうんだな

中古になった私より 新品のあの女の方がいいらしい 

ああ もう笑けてくるぜ

 

かつては一生愛したいと思ったアイツを 今は一生呪ってやりたい

アイツがほかの女を抱いて 熱いキスを交わすのを見たとき 

私、悲劇のヒロインになったよ。

 

 

 

ペン, 羽, 軽量, 付属, 表面, 鉛筆, 静止

 

悲劇のヒロインになったよ 私の運命はなかなかきつい物語を書いてくれたな

あんなに素晴らしい出会いをさせておいて あんなに理想的な恋愛をさせておいて

それなのにいきなり 手のひらを返しやがって

私の青春物語は今 起承転結の結を迎えたのかな 

このまま一生この恨みを抱えて生きるのかな 

そう思った私の手にはいつの間にか かつて運命が握っていたペンがあった

物語がついに私にゆだねられる まだここが結末じゃないのかも

 

一生アイツを憎んで生きる 一生あの人を呪って生きる

そんな悲劇のヒロインに 本当は私、なりたくないよ

今から私が描くのは 

どん底に突き落とされた悲劇のヒロインが 生まれ変わる青春物語

 

 

 

秘密, 森林, 暗闇の中, 自然, 木, 大通り, 通路, ギャング, 距離

 

今まで 運命の描いた物語を生きてきた 散々振り回されてきた

私 いつの間にか 悲劇のヒロインになっていたよ

 

 

 

 さわやか, 丘, 原っぱ, 夏, 大地, 太陽, 晴天, 涼しい, 澄み切った

 

今まで見えていなかった 呪縛から解放された

また誰かを本気で愛したい 誰かからの本当の愛が欲しい 今度こそは

運命的な悲劇のヒロインに 今、全てがゆだねられた 

好きなようにやるよ 幸せになるよ

その悲劇のヒロインは どこで再び起き上がって どこへ向かって行くのか 

どんなストーリーが待っているのかな 私の青春物語

 

 

    

 

 

 

雲量が8~9割の大空   <人>

「雲量が8~9割の空」  作:タネダー

 

川, 湖, 川岸, 湖畔, 水, 草, 日没, 日の出, 曇り空

 

空に広がる薄い灰色 その間を埋める水色 

今日の天気 日記には何と記そうか 晴れか曇りか

雲量が8割以下で晴れ 9割以上で曇り 

どちらにも見える 分からない 決めつけられない

今日の日記には天気がない

 

良いとか悪いだとか 正しいとか間違っているだとか 人は白黒つけたがる

でもこの大空を前にすると そんなことは無力に思えた 愚かに思えた

勝手に引いたボーダーラインの右か左かに すべてをきれいに収めてしまう

そんなことなんて出来っこないよ 世の中がそんなに単純な訳ないよな

 

 

目, 青い目, アイリス, 瞳孔, 顔, 塞ぎます, ふた, まつげ

 

晴れなのか 曇りなのか 分からない空 ちょっと聞いてみよう

父は少し悩んだ 晴れだと言った でも母は逆を言った あっさりと言ったよ

レンズが違って 見え方が違った空 でも見ているものは同じで それが全てだった

雲量が8~9割の空だった

 

正義とかそうじゃないだとか これは善であれは悪だとか レンズは物言う

でもこの大空を前にすると 同じものを前にした この、その、あのレンズが

同じものを映さないことを知った

まるでロボットのように 濁りのないレンズで 目の前にあるものを見る

そんなことなんて出来っこないよ ヒトがそんなに単純な訳ないよな

 

 

 

あれは晴れだ いや曇りだ 見上げて届くその声は

雲量が8~9割の大空にとっては まるでセミの鳴き声 下々の僕らを見下ろしているよ 

ボーダーラインに収まらないものもある

レンズに映る濁ったものは全てじゃない

この世界がそんなに単純だったら つまらないだろう?

雲量が8~9割の大空は 笑っていたよ

 

 

 

 

 

 

 

 

才能   <人>

   資格, 手, 親指, 高, 素晴らしい, たいへん良い, 品質, 才能, 資産

 

「才能」  作:タネダー

 

スポーツ, トラック, 実行している, 実行, スプリント, スピードウェイ

 

僕には才能がない でもあの人にはある 僕は人生負け組だ でもあの人は勝ち組だ

テレビに映る歳が同じくらいの成功者 ぶっ飛んだ自慢話 未来を話してる

僕は認めたくない 欠点を探そうとする 運がよかったんだと思いたい 

心に潜む闇が 姿を現した そいつらが転ぶのを願っている

それで もう嫌になって チャンネルを変える でも心の重さは 何も変わらなかった

 

あの人は才能がある 僕にも同じようなものがあって それがきっといつか覚醒する

そう信じたいけど そうならないことを知っている 現実逃避だ  

天才は努力の天才だっていうけど 努力も才能だって そうやって逃げてきた

 

だからさ 本気で自分と向き合って 才能なんかに逃げずに

スタートラインに立とう 未来へ向かって駆け出していこう

そしたら僕は 才能よりも大きなものを得るだろう

  

 

鉄道, 風景, 田舎, レール, レール トラック, 鉄道線路, 自然, 風景

 

自分には才能がない でもあいつにはあった 

自分は成功していない でもあいつは成功していた

この前の同窓会 久しぶりに見たあいつの顔 

今のあいつはITの社長だってさ いい車乗ってたよ

それに比べて僕は そう思うとつらくなる もうここには行きたくない 

あいつと同じように生きてきた そういえばあいつは昔から機械が得意だったな

機械音痴の僕は感じる これが才能の差か

 

にじみる劣等感と悔しさと嫉妬と自分への絶望 それを感じるとより一層つらくなる

でも焦らなくていい 下手に今を変えようとしなくていい

まるで隣の子の おもちゃを欲しがる子供のように 人と比べなくていいんだ

 

周りに惑わされて 自分が信じる レールを曲げちゃだめだ 脱線しちゃだめだ

今その手で握るマスコンを 行くべき針路に 最大限に傾けていけばいい

そしたら僕は 唯一無二のものを得るだろう

 

 

男, 人, 暗い, シャドウ, 手, 悲しい, 泣いている, 不幸です, 絶望

 

お前には才能がない お前にはどうせ無理だ お前は成功しない 響き渡る悪魔の声

確かに僕の努力は 実らない 挫折ばっかで 心まで折れかかったその時に

あの人はそう吐き捨てた お前には才能がない 才能がない 才能がない 才能が

心の中でこの言葉が 永遠とループする もう心が折れそうだ

 

才能がない すっかり自信を失った僕には その言葉は全てだ 

もう諦めようか もうやめようか 泣きたくなる 

「もうお前の潮時だな」 悪魔はそうささやく 嘲笑っているよ

 

でもそんなの真に受けちゃだめだ 降伏してはダメなんだ

才能がないイコール無理の方程が成り立つ者はloserだけだ

才能という言葉に躍らせれ続けてきたloserの言うことなんて放っておけばいい

その苦しみから逃げずに 向かって全速力でぶち当たれ 

そしたらそいつの化けの皮がはがれる 僕はwinnerになるんだ

プラットホーム   <社会>

 

 

 

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「プラットホーム」  作:タネダー

 

紺色スーツにブリーフバッグ ひと回り大きい学生服 空港行きのスーツケース

誰もが それぞれの行く先に向かう 

時は流れ アナウンスが流れ 電車は流れ 人は流れる

すっと立ち寄っては すっと立ち去る ここにとどまるものは誰もいない

これぞ すっと すっと すっと すっとホームです

決して立ち止まらない 足踏みしない

未来を見据えて流れていく 美しさがそこにある プラットホーム

 

 

茶色い杖のお婆さん 塾かばんの少年に 外国のお兄さん

誰もが バラバラ 十人十色

白線 点字ブロック 人は並ぶ 早い者勝ち

前の人の後ろに並ぶ それがルール 平らな床で同じものを待つ

まさに フラット フラット フラット フラットホームです

みんな違っている でもここでは関係ない 希望がそこにある プラットホーム

 

 

迷子の泣き声 サングラスに白い杖 一人に二つの命

泣き声は親切に包まれ 思いやりとありがとうが行き来する  

点字ブロックにホームドア 満席の車内にぽっかり空いた 特等席

みんなの愛が 笑顔が ホームを包む ふわっと包む 

ふわっと ふわっと ふわっと ふわっとホームです

初対面の壁を通り越し 愛の空気が伝わる ほんわり温まる プラットホーム

 

すっと美しく 希望のフラット ふわっと温かい プラットホーム プラットホーム