雲量が8~9割の大空 <人>
「雲量が8~9割の空」 作:タネダー
空に広がる薄い灰色 その間を埋める水色
今日の天気 日記には何と記そうか 晴れか曇りか
雲量が8割以下で晴れ 9割以上で曇り
どちらにも見える 分からない 決めつけられない
今日の日記には天気がない
良いとか悪いだとか 正しいとか間違っているだとか 人は白黒つけたがる
でもこの大空を前にすると そんなことは無力に思えた 愚かに思えた
勝手に引いたボーダーラインの右か左かに すべてをきれいに収めてしまう
そんなことなんて出来っこないよ 世の中がそんなに単純な訳ないよな
晴れなのか 曇りなのか 分からない空 ちょっと聞いてみよう
父は少し悩んだ 晴れだと言った でも母は逆を言った あっさりと言ったよ
レンズが違って 見え方が違った空 でも見ているものは同じで それが全てだった
雲量が8~9割の空だった
正義とかそうじゃないだとか これは善であれは悪だとか レンズは物言う
でもこの大空を前にすると 同じものを前にした この、その、あのレンズが
同じものを映さないことを知った
まるでロボットのように 濁りのないレンズで 目の前にあるものを見る
そんなことなんて出来っこないよ ヒトがそんなに単純な訳ないよな
あれは晴れだ いや曇りだ 見上げて届くその声は
雲量が8~9割の大空にとっては まるでセミの鳴き声 下々の僕らを見下ろしているよ
ボーダーラインに収まらないものもある
レンズに映る濁ったものは全てじゃない
この世界がそんなに単純だったら つまらないだろう?
雲量が8~9割の大空は 笑っていたよ